川崎二郎からのメッセージ

情報通信戦略調査会 第一次提言を菅官房長官へ提出

私が会長を務めております情報通信戦略調査会において、本年4月から8回にわたり、企業・有識者・団体・地方自治体等から、それぞれの課題についてヒアリングを行ってまいりました。
広範囲の分野の中からテーマを絞り、政府に対し第一次提言をとりまとめ、6月21日に総理大臣官邸において、菅官房長官へ直接提言を行いました。
引き続き、本調査会において様々な議論を進め、政府に対し様々な提言を行ってまいりたいと思います。

政府への提言
日時 平成25年6月21日(金)
場所 総理大臣官邸 官房長官室
提出先 菅 義偉 官房長官
提出者 情報通信戦略調査会
   
会長   川崎 二郎
事務局長   橋本 岳
事務局次長   小林 史明
    瀬戸 隆一
    藤井 ひさゆき


情報通信戦略調査会 ヒアリング日程
月日 議題
4月3日 ICT産業の国際競争力強化等について
―放送コンテンツの海外展開、放送新技術の動向―
4月10日 ICT分野のアプリケーションの普及促進
―韓国の戦略と現状―
4月17日 ICTを活用した街づくりについて
4月24日 ICTを活用した会議等における業務の効率化について
5月8日 情報リテラシーの育成(涵養)について
5月15日 ICTを活用した多様な就労形態(テレワーク)について
5月22日 ICTを活用した医療分野における取り組みについて
5月29日 ICT成長戦略会議における検討状況について



平成25年6月19日
情報通信戦略調査会 第一次提言
自 由 民 主 党
情報通信戦略調査会

はじめに
【本調査会の立ち位置】
わが自民党情報通信戦略調査会は、電気通信調査会時代から含めれば放送・通信そしてネットに至るまで、一貫して我が国の放送・通信関連の政策と産業をリードしてきた。近年では、放送分野では地上デジタル放送へのソフトランディング、情報通信分野では2001年のIT戦略本部の設置以来この6月14日に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」に至るまで、放送・通信サービスを極力安価かつ国土全域に届けることを旨とし、特に電電公社の民営化以来、公共放送であるNHKを含め民間の活力を前面に押し出しつつ競争と規制の適切な使い分けにより、今の日本の放送・通信分野に関連する産業の発展とサービスの普及・高度化の礎を築いてきた。

【通信・放送に関する現状認識】
その視点で現状を顧みるに、例えば情報通信分野では超高速ブロードバンドの基盤整備率は97%、携帯電話及びPHSの人口普及率は110.2%となり確実に基盤は整った。またスマートフォンの世帯普及率は2010年3月末で9.7%だったのが2013年3月末で49.5%と爆発的な増加傾向となっている。放送分野でも、世界的にも優位な状況にある地上波放送に加え、BS放送の普及率は32.1%、CS放送の普及率は6.9%、CATVの普及率は51.8%となっており、確実に多チャンネル化が進んでいる。これらの点からICT基盤整備は世界の中でも比較的高い水準にある。
しかし一方で、公的分野・教育・医療等各分野での利用の遅れ等のため、世界経済フォーラム(WEF)によるICT国際競争ランキングは2005年の8位獲得をピークに2013年では21位と低迷してしまっている。
また同時に日本のお家芸であった情報・通信関係機器の世界シェアや国内製造率が落ち込み、空洞化が進んでいることも誠に憂慮すべきである。
具体的に日系企業の主要な通信機器の世界シェアおよびその中の国内・海外での生産の割合を見てみると、薄型テレビについては、最も生産高が高くなった2010年に約4.5兆円の生産高(世界シェア41%)、うち国内生産高が約1.1兆円(25%)あったのに対し、2012年では約3兆円(世界シェア31%)、国内生産高はわずか892 億円(3%)となった。主要メーカーでも大幅な赤字となり工場閉鎖や撤退を余儀なくされる事態に至っているのは記憶に新しい。
また携帯電話は2008 年には2.2 兆円の日系企業の生産高(世界シェア15%)のうち国内生産高は約1.2 兆円(56%)が、2012 年には約1.4 兆円(世界シェア8%) のうち国内生産高は約6,700 億円(46%)となっている。この国内生産高にはスマートフォンではない従来型の携帯電話が多く含まれており、よりスマートフォン化が進めばさらに国内生産高の低下傾向は続くものと予測される。
総合すると、携帯電話を含む通信機器、テレビ受信機、電子部品、パソコンの4 分野を合計すると、2008 年の国内生産高は約14.1 兆円あったものが2012 年には約8.9 兆円となっており、5 年間で約5.3 兆円の国内生産が失われたことになる。これは過去の円高等の要因があったとはいえ、きわめて深刻な事態である。単なるICT 利活用の普及・高度化の推進に留まらず、メーカーの合併や再編成も視野に含むような、日本の産業発展や雇用拡大に貢献するような通信・放送政策の見直しが急務ではないか。
また、放送産業についても経済の低迷や媒体としての競争環境の変化のため、番組内容について、特定娯楽産業や通信販売番組の増加、海外ドラマやスポーツ番組が目立つことなど、国内制作コンテンツの質の低下も指摘されている。
隣国韓国では、経済危機を契機として、徹底した行政の電子化を進め、行政の透明化や利便性の高いサービスを実現している。また電子政府ランキング1 位という評価を活用して海外にも積極的に展開し、国際市場を獲得している。また米国ではICT 分野の研究開発政府予算を年率約10%ずつ増加させ、ICT を活用したイノベーション創出に向けた取り組みを強化し、多様なベンチャー企業等により生み出される新たなサービスが世界のICT 分野を牽引している。
このような状況下において、安倍政権は6 月14 日に新たなICT 戦略である「世界最先端IT 国家創造宣言」を閣議決定した。成長戦略の柱として情報通信技術を位置づけ、世界最高水準のIT 利活用社会の実現を目指すこととしている。
本調査会は、ここに記したような立ち位置および現状認識に基づき、真に日本の産業・雇用の活性化に役立つ通信・放送政策および産業の在り方を追求することで再び世界最先端のICT 国家を「取り戻す。」ことを目的とし、全てのステークホルダーの叡智を結集して取り組もうとするものである。

【本提言について】
このような認識の下、本調査会では本年4 月から8 回にわたり、企業、有識者、団体、地方自治体等からヒアリングを行い、議論を重ね、広範囲の分野の中からテーマを絞り、以下の通り政府に対する提言を取りまとめた。
引き続き関係者の意見を踏まえつつ、継続的に政策の検討を進める。

1. あらゆる分野でのICTの利活用の推進
街づくり、テレワーク、医療、教育、電子政府、資源、高齢化等わが国の多様な社会的課題についてICTの利活用は、未だ十分に進んでいるとは言えない。今後もICTを活用した社会実証プロジェクトを実施し、ICTを通じて解決するための具体的なモデルを示しながら、国内での展開に加え、同様の課題を抱える海外にも展開していくべきである。

(1) ICTを活用した街づくり
活力ある地域づくりは、わが国経済再生のための重要な課題である。
地域においては、地域情報ネットワークなど、先進的なICTを活用した街づくりに取り組んでいる自治体もあり、環境・エネルギーへの対応、疾病予防・介護予防への積極的取り組み、地域でのベンチャー育成等の新産業創造、またIP告知システムによる要援護者支援や買物支援等のともに支えあうコミュニティ作り、さらに情報伝達制御システム整備等の災害対応の強化、帰宅困難者支援等、実証的取り組みが行われている。
これらの取り組みは、着実に成果を上げている。さらに波及効果を高めるために、先行事例の標準化や今後導入される共通番号等を活用して国内のみならず海外への展開を図り、普及促進に努める。

(2) テレワーク(多様な就労形態)の普及促進
テレワークは、ICTを活用して場所や時間にとらわれない柔軟な働き方で、仕事と育児、介護等との両立が容易となり、企業や社会にとっても生産性向上、雇用創出など様々なプラスの効果が期待され、安倍政権の成長戦略の中でも、重要な施策として位置づけられている。
しかしながら、テレワークを制度として導入しているわが国企業は約10%にとどまっており、特に中小企業の導入率が低い状況にある。
一方米国では、常時テレワークを制度化した企業は40%弱の導入、また韓国では、12.6%の国・自治体が導入するなど、官公庁がリードしてテレワークを推進している。
わが国においても、テレワークにおける勤務時間管理、業務評価、情報セキュリティ、コミュニケーション等の課題も、ICTを活用して解決することが実証されてきていることから、テレワークでもできるように仕事のやり方を変えるなど、発想の転換を進めなければならない。
テレワークで柔軟に働くという選択肢の周知に努め、経営者の意識改革やより多くの人が利用できる環境整備など、テレワーク導入促進のための制度的対応、普及啓発、社会実験等を積極的に推進する。
遅れを取り戻すため、まず政府において各省が目標値を定めるなど、率先してテレワークを促進すべきである。

(3) 医療・介護分野におけるICTの活用を推進
医療における無駄の排除、医療費の適正化を促進し、地域における医療サービスの向上、また災害にも対応できる強靭な医療情報連携基盤の構築、遠隔医療による患者負担の軽減、医療統計の活用基盤の整備等のために、医療・介護分野へのICTの活用は、今後の長寿健康社会の実現のために大きな意義を持つものであり、積極的に推進し、実現していかなければならない。
医療現場では、大病院を中心に電子カルテが普及してきており、レセプトのオンライン化も病院では99%まで進んでいる。
また先進的な取り組みとしては、東日本大震災による甚大な医療被災からの復興のため、「東北メディカル・メガバンク計画」の取り組みが行われており、医療情報連携基盤が宮城県、岩手県で稼働する予定となっている。また、香川県では、多くの離島を抱える地域事情も背景に、遠隔医療ネットワーク、周産期医療情報ネットワークを構築、活用しているところであり、医師不足等の問題を抱える他地域へも展開している。
しかし、レセプトデータは適時に保険者や国に集められているものの、そのビッグデータが医療関係者や国民への提供・活用は進んでいない。また各地域での実証実験は成果を挙げつつあるものの、本来その成果を生かして同時に描くべき国としてのグランドデザインが存在せず地域バラバラに進んでいる感は拭えない。また遠隔医療を推進するためには規制や診療報酬の見直しも不可欠であり、国において検討が必要である。
思い切った省庁間の交流人事を行ってIT専門家を厚生労働省に集め、こうした課題に対して迅速に取り組む必要がある。
同時に、こうした先進事例で構築されたシステムの横展開も積極的に推進するとともに、アジア地域等の海外に向けて、パッケージで展開していくために、政府としての支援を進める。また番号制度を医療・介護分野で活用するため、ロードマップを作成するべきである。

(4)情報リテラシー(基礎能力)教育の推進
スマートフォンを含めた多様なICT機器が小中学生をはじめとする青少年にも急速に普及する中、ネット上には青少年にとって有害な情報も流通しており、現実問題として、ネットいじめやネット依存などの問題も一部で発生している状況にある。
平成22年には、自公政権下で、自由な情報の流通を原則としつつも、ネット環境をより良い方向に整備するため、「青少年ネット環境整備法」を制定し、フィルタリングの普及等を推進してきた。
最近は、情報リテラシー教育が学習指導要領に位置付けられるなど、携帯電話やインターネットの利用を前提とした教育は一定程度前進している。また、政府や携帯電話事業者等が中心となったリテラシー教室が積極的に開催され、受講者数も相当数に及んでいる。
選挙や政治活動にインターネットが本格的に導入されるなど、あらゆる場面で今後ますます多様なネット利用が進展するため、青少年を含めた利用者が、膨大な情報から正しいものを選び出す能力を身につけることは、情報社会の健全な発展のための不可欠な基盤となってくる。
こうした状況に対応するためには、当然学校における情報リテラシーに関する教育を行うための環境をさらに整備することに加え、保護者が正しい情報モラルを身に付けるとともに、家庭で携帯電話等の使い方についてルールを決めるなど、学校教育と合わせて家庭でのコミュニケーションも不可欠である。また、スマートフォンでは新たなフィルタリングの仕組みが必要となるなど、新たなサービス・機器への速やかな対応も重要になってくる。
情報リテラシーの涵養は、息の長い取り組みが必要であり、引き続き、家庭、学校、PTA、消費者団体、通信事業者、アプリ提供者、政府、有識者等のあらゆる関係者が啓発活動を展開し、利用環境整備に取り組んでいくべきである。

2. 失われた国際競争力の回復に向けて
(1) 国内産業と連携した放送技術の研究開発の推進
わが国では、広く国民の協力を得て地上放送の円滑なデジタル化が達成され、 高精細のフラットテレビが普及したが、放送・映像分野では韓国等との競争で大きく水をあけられた状況にあり、これを打開するためには、新たな取り組みによって、国際競争力の回復と抜本的な強化を図らなければならない。
高精細映像は、医療や防災をはじめとする様々な産業への応用が可能となり、広がりを持つ技術であることから、本年に入り世界的にも韓国、欧州等を中心に次世代の高精細映像への取り組みが加速している状況にある。わが国においても、メーカーや放送事業者等の関係者の協力体制を確立して、高画質(4K、8Kテレビ)でスマートテレビなどの双方向サービスにも対応できる受像機と放送システムを確立するべく政府としても支援を行っている。
地上デジタル放送技術については、南米諸国で採用され評価が確立している日本方式の南部アフリカや中米諸国等での採用を積極的に働きかけ、採用国で デジタル放送移行への支援を行う。これにより、当該地域との各ICT分野における技術協力関係を深めるだけでなく、日本製品の市場開拓に道を開く。
そうした状況を踏まえ「はじめに」にも記した課題意識を含め、わが国は、世界から大きく水をあけられた現状を官民ともに検証し、その認識に立って、今後、「どうすべきか」を検討していかなければならない。

(2) 放送コンテンツの質の向上と海外展開の促進
わが国の放送コンテンツの海外展開は、日本製アニメがANIMEとして世界的に人気を呼ぶなど一定の成果をあげてきたが、近年、韓国ドラマ等に押されるとともに、アジア地域の経済発展に伴い自国制作番組が増加する中で、輸出額はピーク時の7割程度まで落ち込んでいる。放送コンテンツの質の向上および海外展開は、日本の文化や社会の海外へのPRとして国策的にも推進するべきであり、また音楽、番組関連グッズ、消費財、インバウンド観光等の市場を開拓する契機ともなることから、クールジャパン戦略の重要な分野として積極的な巻き返しをしなくてはならない。最近では提供先国での音楽出版権ビジネス立上げを視野に入れた新たな取り組みや、TVショッピングでの日本商品の販売推進、アニメーションの海外共同制作など新たな取り組みも見られるところである。
これまでも、番組のフォーマット販売に関し欧米市場で一定の成果を上げるなど、わが国の放送番組の制作力は世界的にも評価は低くない。こうした企業の取り組みを後押しするため、政府としても特に経済発展著しいアジア地域への展開を中心に、ローカライズや海外放送枠の確保等への積極的な支援を図る。また海外展開に不可欠な著作権等の権利処理の円滑化に向けた支援を推進する。

以上


自由民主党 政策トピックス 『情報通信戦略調査会 第一次提言』




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